2007年 マッキンリー登山報告(1)

 

2007年6月10~7月12日

参加者 : 2 名

2007年6月10日から7月12日まで約1ケ月かけて、マッキンリー山に登ってきた。
その報告をする。

1. マッキンリーの概要

(1)マッキンリー山の位置:
マッキンリー山は米国アラスカ州にあり、南峰6194mと北峰5934mの2つのピークからなる。
南峰は北緯63°04′西経151°00′に位置し、北アメリカ大陸の最高峰である。
緯度の高い地方にあるため、ヒマラヤの7000m程度の高度に相当すると言われている。
(2)マッキンリーの名称:
アラスカ州での正式名称はデナリ(Denali)と言う。
これはアメリカ先住民の言葉である。
マッキンリー山はウィリアム・マッキンリー米国大統領に因んで、ゴールド探鉱者ウィリアム・ディキーによって命名され、デナリから変えられた。
今も先住民の名称に戻そうとする交渉は続けられている。
ちなみにマッキンリー山があるマッキンリー国立公園は1980年にデナリ国立公園に変更された。
(3)登山者の守るべき規則:
デナリ国立公園での登山者は次の規則を守る必要がある。
①タルキートナ・レンジャー・ステーションに60日前までに登山申請をする。(申請後登山許可書が送られてくる。同時に申請書に記入したメンバー一人ひとりに、マッキンリー登山についての詳細な情報が書かれている日本語版の小冊子が送られてくる。)
②登山者は全員、入山時にレンジャー・ステーションに立ち寄りチェックインする。ここでオリエンテーションと現在の天候・雪崩・氷河の状況と衛生上の注意事項を受ける。
③下山時にレンジャー・ステーションに立ち寄りチェックアウトする。
④登山時に持ち込んで発生した、ゴミはすべて持ち帰る。
⑤人間の排泄物はレンジャーの指示に従う。
⑥ガイド・サービスは認可された7つのガイド・サービス社に限られる。
(4)登山シーズンとルート:
雪と天候状態は5月から7月までが良い。
5月はまだ低温で風が強く、7月は温暖ではあるが不安定になり、氷河のクレバスも大きくなる。
成功率が高いのは6月である。
30を超えるルートの中で1シーズン1000名以上の登山者の75%が西面のウェスト・バットレスから登っている。
我々もこのルートから登った。
(5)登山の特徴:
①セスナから降り立った地点、ランディングポイント(以下LPという)から頂上までは標高差にして4200メートル、距離として約28.5kmである。
②北緯63度に位置しアラスカの中央平野を貫いて聳え、ベーリング海、アラスカ湾が近く、その影響をまともに受け、天候は激しく変化する。
気温は歩き出しの氷河上では30℃を超え、頂上近くではマイナス30℃となり、その温度差は大きい。
③マッキンリーの標高に対応するため、高度順応しながらの標準日程は頂上まで2週間、登山期間としては3週間と長くなる。
④登山期間が長いため、装備・食料・燃料などあわせた重量は一人あたり50kg程度になる。
ヒマラヤのようにポーターはいないので、これをリュックとソリに分けて自力で運ぶ。
⑤登山技術は日本の厳冬期の雪山技術・雪山生活技術に氷河のクレバス対応が必要となる。 具体的にはアンザイレンして、C3(3300m)までは氷河上でスキーを履き、ソリを牽引し、それ以上の高度ではピッケル・アイゼンワークで雪稜・岩雪のミックスに対応する。

2. 隊 の 編 成

大蔵隊への参加:
大蔵喜福隊長がいたから我々はマッキンリーに登頂できた。
隊長は1990年からマッキンリーの5700m地点に観測機器を設置し、気象観測を始めた。
2000年からはその気象観測をアラスカ大学に引き継いだが、現在でも観測機器のメンテナンスを担当し、あわせてマッキンリーの登頂を毎年行っている。
今年も隊を編成し例年どおりに気象観測機器の設定・メンテナンスとマッキンリー登頂を目指すことになっていた。
この気象観測機器を製作しているKさんが稜朋会の会員であり、Kさんを通じて隊長にお願いしてもらい、隊へ参加ができるようなった。
会からの参加は私(63歳)とI(66歳)さんの2人である。
参加メンバーは隊長と仕事を一緒にやっていたプロカメラマンU(54歳)さん、アコンカグアやエルブルースで知り合った4人組(別名A隊)のKO(66歳)さんH(66歳)さんS(62歳)さんKU(76歳)さん、アラスカ在住のアラスカ3人組(別名アラスカ隊)でアラスカ大学の事務員で気象観測の仕事に携わっているT(37歳)さん、我々をサポートしてくれる、「オーロラ観測の山荘を経営しているM(36歳)さんとアウトドアマンY(36)さん」である。
Tさんはマッキンリー山は今回で6回目、Yさんは2回目である。
出発前の最初で最後の打ち合わせは3月4日に行われた。
隊員の自己紹介後、隊長からVTRでのマッキンリーのコースの状況、ロープワーク、ソリの牽引についての説明、つづいて日程、装備、食料の説明があった。
個人装備表や食料計画は既に隊長が一覧表を作成しており、配布された。
登山申請はA隊の4人と隊長隊7人の2パーティとなった。
両隊はすべて同一行動をとることになった。
保険については登山隊として死亡・救援の保険に加入するので、個人として傷害・疾病治療の保険に加入した。

3. 日  程

(1)計画日程

高所登山は高所順化が必要であり、それがうまくいかないと高山病[急性高山病、高所肺浮種(肺水腫)、脳浮腫、網膜出血]になる恐れがある。
高所順化できる十分な日程と手法が必要である。
国立鹿屋体育大学の山本正嘉氏の「登山の運動生理学百科」によれば、現在使われている経験則は「鋸歯状の順化行動」あるいは「昼高夜低の原則」と言った言葉で集約される。 高所に行くと順化も起こるが同時に衰退も起こる。 そこで順化を最大限に身につけるためには、昼は高所に上って低酸素の刺激を受け、夜は低所に下りて休養をとる。 この繰り返しによって高所順化が身についていく」ということだ。
日程についてはタルキートナー・レンジャーステーションの小冊子に天候が良好な際のウェスト・バットレス登山は最高速ペースで21日間が必要である、と書かれている。
ネットで調べても、ほとんどの隊が上りに2週間、登山期間としては3週間ほどかけている。
我々も上りに2週間、登山期間は約3週間の日程とした。
隊長の示した日程は次の通り。

・予定日程表

6/10————-バンクーバー経由でアンカレッジへ
6/11~12———アンカレッジにて食料・装備調達
6/13[登山第 1日]アンカレッジからタルキートナへ、チェックイン後セスナでLPへ
6/14[登山第 2日]LP 2140m→C1 2450m
6/15[登山第 3日]C1→C2 2800m
6/16[登山第 4日]C2→C3 3300m(LPからC3までは天気が悪くても予定どおり進む)
6/17[登山第 5日]C3→MC4330m→C3 MC(メディカルキャンプ)へ荷揚げ
6/18[登山第 6日]休養日
6/19[登山第 7日]C3→MC 4330m
6/20[登山第 8日]休養日
6/21[登山第 9日]MC→HC 5250m→MC  HC(ハイキャンプ)へ荷揚げ
6/22[登山第10日]MC→HC (ここからはMCかHCのどちらかで天気の様子を見る)
6/23~27
—-[登山第11~15日]–HC→頂上6194m→HC (天気がよければアタックする)
6/28~7/1
—-[登山第16~19日]–下山し、チェックアウト後アンカレッジへ
7/2~7/7————–アンカレッジにて滞在後、バンクーバー経由成田へ

(2)実績日程

・実績日程表

6/10曇時々雨————成田発17:00エアーカナダAC004便(7.5h)——————————————-バンクーバ着9:5011:10発( 2.5h)
———–——————アンカレッジ着13:35AC537便、アンカレッジ加藤宅泊
6/11——————食料買出し・準備 加藤宅泊
6/12——————個人装備調達(REI,AMH 加藤宅泊
6/13晴のち曇—-第0日アンカレッジ→タルキートナー アラスカ隊と合流、———————————–レインジャーステーションでチェックイン、——————————————–TAT(タルキートナーエアータクシー)小屋泊
6/14———-第1日タルキートナー→LP(2140m)
6/15曇のち快晴第2日LP→C1(2450m)  11:20~19:00 歩行7.5時間
6/16———-第3日C1→C2(2800m)  10:30~15:30 歩行5時間
6/17曇一時晴—-第4日C2→C3(3300m) 10:30~16:30 歩行6時間
6/18———-第5日休養日
6/19ガスのち晴第6日C3→MC(4330m)→C3 8:00~17:50 歩行11時間———————————–MCへの荷揚げ
6/20———-第7日C3→MC(4330m) 9:10~18:30 歩行9時間
6/21———-第8日休養日
6/22雪のち曇—-第9日ホワイトアウトのため停滞。
6/23曇時々晴—-第10日ホワイトアウトのため停滞。————————————————-フィックスロープの手前まで往復
6/24———-第11日ホワイトアウト・雪のため停滞。
6/25———-第12日ホワイトアウト・雪のため停滞。———————————————–エンドオブワールドまで往復
6/26快晴無風—-第13日MC→HC→MC 9:00~21:00 歩行11時間 ————————————-HCへ荷揚げ
6/27晴時々曇—-第14日MC→HC(5250m) 12:00~20:00 歩行8時間
6/28晴風強し第15日休養日
6/29快晴のち曇第16日HC→頂上(6194m)→デナリパス上5600mでビバーク———————————–10:30~3:00 歩行16.5時間
6/30曇のち晴—-第17日5600m→HC 6:00~10:30 歩行4.5時間
7/1風雪——–第18日HC→MC 20:00~1:00 歩行5時間
7/2風雪のち晴第19日MC→  23:00LPに向かって下山開始
7/3———-第20日LP 23:00~14:30 歩行14.5時間 セスナ飛ばず
7/4———-第21日セスナ飛ばず
7/5———-第22日LP→タルキートナー(レインジャーステーションチェック—————————–アウト)→アンカレッジ 加藤宅泊。
7/6——————装備干し。近くのホテル泊。 5:00 隊長帰国
7/7——————スワードへ。鮭つり。  スワードでテント泊。
7/8——————12:30発、アンカレッジにもどる。
7/9——————自由行動。団体装備しまう。
7/10——————アンカレッジ発14:15AC537便ーバンクーバー着18:30—————————–(ホテル泊)
7/11——————バンクーバー発13:30 (8.5H)エアーカナダAC003便
7/12——————成田着15:05

S . F 記


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