晩秋の阿弥陀岳南稜登攀

 

2014年10月25日

参加者 : 9 名

晩秋の八ヶ岳は快晴に恵まれた。
2~3日前に雨が降り山の上部は雪かと思ったが気温があまり下がらず雪にはならなかった。
今回は9名の参加者。
マルチピッチでの登攀にあたり、どのようにロープを張るかを思考した。
1ピッチ目のガリーには大きなテラスが無いので9人を留まらせることは出来ない。
2ピッ目の草つきにロープを張り其処を抜ければ稜線になるのでロープは不要となる。
過去に秋と積雪期に登っているのでルートは掌握している。
後はどの様に順番を組むかだけ。
中堅の3人を除いて実践クライミングでのロープワークは新人。
1ピッチ目の終了点にはボルトが1本あるがその他は支点が無い。
ハーケンを持参したが打ち込むリスが近くにあれば良いのだがとの不安はある。
兎に角、稜線まで留めないようにする方法を頭に入れる。

10月24日(金) 晴れ
夜10時に新宿スバルビル前から定刻に出発。
談合坂でN号と合流後小淵沢インター経由で八ヶ岳美術館駐車場に午前1時に到着。
トイレが使えるかと思ったらシャッターが降りて冬季期間使用出来ないとの看板。
そのままテントを張り仮眠をとる。

10月25日(土) 晴れ
朝4時に起床
久しぶりに見る満天の星。
今日の登攀を楽しませてくれる天候である。
モーニングミルクティーを作り、個人個人で朝食を摂ってからテントを撤収。
4時半に駐車場より舟久保の十字路に車を移動する。
共同装備のロープ4本を分けて午前5時、ヘッドランプを点けて出発。
登攀に慣れていない会員のザックのパッキングを見て一言。
過剰の衣服、飲料水、ザックの外側に装備類を付けている等クライマーとは程遠い。
不慣れなのでこのような時に指導をしておかないと、夏合宿で剣などに行った時他の会から陰口を言われるのが関の山。
『剣の岩に来るのは10年早い』・・・
来年の夏には憧れの剣岳の予定。
登ることは中堅と行けば登れるが他の登山者からダサイと言われたら落ち込むこと間違いない。
ザックに着けたワッペンがインターネットで嘲笑されているかもしれない。
そんな理由でアプローチから指導。
1時間ほどで立場岳に向う稜線に抜けヘッドランプをしまう。
黄葉の唐松が物凄く綺麗。
歩き始めて2時間30分。
立場岳を抜け、阿弥陀の南稜が見え、霜柱で銀色の道になった青なぎを通過。
そこから1時間で無名峰を通過し更に1時間ほどでP3基部に午前10時に到着する。
ハーネスを付けロープをほぐして、プルージックの使い方を再度説明。
メインロープを1ピッチ目は8.5mm、2ピッチ目は9mmを使用するので、プルージックは6mmでないと効かない。
7mmしか持っていない会員には6mmの短いのを延長させる。
順番待ちが無く、Kがダブルロープでガリーをリードする。
無線でベルグラが張り緊張するとの連絡。
先日の雨が凍っている様子。
ホールドとスタンスを丁寧に拾うしかない。
途中のランニングビレーは1箇所のみ取れる。
終了点のピンは凍った場所にあるため使用できず、少し登った地点にハーケンを2本打ってビレー点にして後続を迎える。
WロープにNとSaがそれぞれ1本づつ使ってプルージックで2ピッチ目用のロープを担いで登る。
そのまま2ピッ目の草つきをNがSaにビレーされてWロープで登る。
其の間に1ピッチ目に張った2本の固定ロープを女性のNaとKuが続く。
続いてSuが続く。
継続して2ピッチ目の登りに入ったとの連絡が入り、末端に繋がったEとFが登り始める。
我々の後に来た3人パーテイはベルグラが張っているとの話をしたら自信が無いとの事で敗退した。
完全に貸しきりとなり指導しながら登れる。
途中のビレー点に2人が残っており、我々が到着時点で1ピッ目のロープ2本を2人が引いて登ってもらう。
引いて登った2本のロープを回収後、EとFが2ピッチ目のロープ末端に繋がりハーケン等のギヤーを回収し草つき終了点に到着する。
9人で2時間近く掛かる。
大休止しP4に向う。
15分ほどでトラバース地点に到着。
ロープを張るほどでは無いと判断して、慎重に3点確保を守る事を指導し通過。
ザレ場を越えると阿弥陀岳山頂に午後12時30分に全員が到着。
ほぼ予定通りで登攀を終える。
固い握手をかわし、記念写真と360度の景色を堪能しながら大休止。
午後1時に御小屋尾根を下山開始。
晩秋の八ヶ岳高原を眼下に見ながら登攀を無事に終えた安堵感で心がホッとしながら午後3時30分で駐車場前に到着する。
途中で鹿の湯に入り午後8時30分に新宿に到着。

晩秋のアルパインクライミングを楽しく終えた。

Y ・ F 記

Eさんの感想

今回の山行は、直前で仕事の都合がつき、急遽参加のお願いをしたところ、運よく席が空いているとの事で滑り込ませて頂きました。
準備時間もなかった事もあり、地図も購入しておらず、下調べもネットで少し検索した程度でした。
まず、阿弥陀岳という名称について気になったので調べてみました。
『かつて山岳信仰の対象となる山は、麓の集落から仰ぎ見ることの可能な山であり、阿弥陀岳という名称もそこに由来されるという。
頂には多くの石塔が建ち並び、頂に通ずる御小屋尾根は諏訪の大祭で有名な御柱(おんばしら)のその柱となる神様の木を切り出す尾根であることから付いた名だという説もある』との事。
6月に父を亡くし、なんとなく供養も出来るかなと。
心の中で仏様に対し『南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏』と、唱えながら足を進め始めましたが、法事等の為6月から参加を控えた結果3キロも太ってしまったせいか、気が付けば自分に対して『南無阿弥陀仏』を唱えておりました。
しかしながら、そのお蔭で不思議な力がみなぎり、先輩の方々に何とか下山まで遅れずについていけました。
今回は私にとって、岩登り研修を除き、俗にいうロッククライミングは初めてであり、ネットや書籍等である程度の知識は得られるものの、ネットや書籍の主人公として実践した場合は妄想?通りできるかというのが最大の楽しみであり、同時に死と隣り合わせのところに身を置く恐怖もありました。
実際南陵のP3の取り付きで待機しているときはいろいろな感情が交差し「何故山(この場合崖)に登るのか。
その問いに答えてはならない。
とにかく登りに行け、とにかく登りに行け」鈴木謙造。
「一歩を踏み出せるなら、もう一歩も踏み出せる」トッド=スキナー。
「山(この場合崖)は強くなってから楽しむもの」大西宏。
「登山家は、山で死んではいけないような風潮があるが、山で死んでもよい人間もいる。
そのうちの一人が、多分、僕だと思う。
これは、僕に許された最高の贅沢かもしれない」山野井泰史。
とか。
しかし、幸いなことに群集心理が助けになり、「赤信号皆で渡れば怖くなし」詠み人知らず。
で難なく一歩目と二歩目は踏み出すことが出来ました。
途中ベルグラ(岩に氷が付いたもの)があり、何度もフォールラインを見返し、滑落のイメージがふつふつと湧き上がってきましたが、山野井さんとは逆に死んでも全然贅沢には思えなかったため、リーダーにどこにステップをしたら良いか、難所の最中にお聞きしてしまいました。
さすがFリーダーは余裕の表情で登ってこられて経験の差を痛感しました。
また、1ピッチ47メートルの途中2か所しか残置が無いのに、トップでリードクライミングされたKさんも、技術が無い私には死の覚悟がないと到底真似できないと思いました。
P3、P4と無事乗り越え、頂上に到達したときには、今までにない心の充実感を覚えました。
大げさに感じた「もし五十歳まで生きて、山を登り続けることができるのなら、俺は下界での人生がどんなに不幸であってもいいよ」奥山章。
がわかる気がしました。
このような一般登山者ではできない体験をさせて頂き、また、ネットや書籍では得られないいろいろな事をご指導頂き、リーダー始め、先輩の方々には本当に感謝しております。
ありがとうございました。

Naさんの感想

駐車場前泊日帰りでバリエーションルートも楽しめる阿弥陀岳南稜に行って来ました。
今回の山行では、「P1 P2 P3・ガリー・ルンゼ・ベルグラ 」等の飛び交う会話。
「プルージックでの登攀」を経験し、ちょっぴりクライマー気分も味わう。

コースは舟山十字路をスタート、青ナギ、岩溝ガリー、P3を経て頂上目指すルート。
帰路は御小屋尾根を下る。

暗い中、ヘッドランプの光を頼りに出発。
満天の星が天気上々を約束してくれているようだ。
暫くは苔やザレ場の樹林帯を進む。
共同管理地の杭が随所にあり、不法侵入防止のワイヤーが張られている。
樹林帯を抜け青ナギに到着。
ナギとは山肌が崩れた場所を呼ぶとのこと、ナギの意味を知ったのも今回の収穫。
リーダーからこれから登るコースと手順の説明を受ける。
霜柱をサクサク踏み青ナギを通過、P1 P2 を回り込む。
ここまでは一般登山道の岩場と大差なく進み、いよいよ本日の核心部 P3 だ。
岩にヤマレコで見た金属の案内版があり、右は中級コース、左が岩溝コースと表示されている。
左に回り込む手前でハーネス等装着、身支度を整え岩溝コース、ガリーの下部に回る。
K・サブリーダー がダブルリードロープで登り、F・リーダーが下で確保。
50メートル 近くある岩場、途中遮る物は無い、滑れば一気に下まで落ちてしまいそう。
軽い怪我では済まない。
登る方も確保する方も技術と経験が必要。
ロープを操る手慣れた様子にさすがベテラン。
カッケイ!です。
フィックスされたロープを頼りにN・サブリーダーとSさんが、2ピッチ目のために二本のロープ持って登る。
トップロープがセットされるのを待つ間プルージックとビナ通しの復習。
日和田やツヅラ岩、那須朝日岳と機会がある度に教えてもらっているのに….身に付いていない。
順番が回ってくるまで何度も繰り返してみる。
ロープが二本掛けられトランシーバーから後続OKの連絡。
本日の紅一点、先に登らせてもらう。
岩に取り付き2メートルほど上った辺りから溝が凍っている。
夏場は水と苔で滑るので此処は冬の初心者コースとして人気らしいが、既に朝晩は氷点下まで下がる時期。
薄く岩に張り付いたガチガチツルツルの氷がくせ者となり手足の置き場に困る。
身体が小さく足が短いので余計届かない。
凍った場所を避け三点確保。
万一のプルージックを動かしつつ必死で上る。
ホールドあるし、傾斜もあるのでアイゼンがあったら楽に上れるのにと思ったが、この薄く凍った状態をベルグラと云い。
アイゼンが効かない厄介な状態なのだそうだ。
山行前にベルグラと言われ??疑問のままにいたが実体験で納得。
これも今回の収穫。
やっと1ピッチ目の岩溝ガリーを脱出。
一旦デイジーチェーンで身体を確保。
2ピッチ目は稜線まで急勾配の草地を上がる。
草に足を取られないよう、斜面を崩さないよう気をつけながら上る。
稜線に出て少し進むと頂上直下のザレた岩場。
三点確保で慎重に行けば問題無し。
頂上到着だ。
360度の大パノラマ、主峰赤岳、続く八ヶ岳の峰々、富士山や彼方遠くの北アルプスの山々。
御嶽山の噴煙までもハッキリ見える。
最高の天気で気分も最高!!
山頂で暫し休憩し、御小屋尾根から下山。
一般ルートなのに意外と怖い岩場のハシゴが有ったり、浮き石だらけの急な下り坂が延々続き、なかなか神経を使うルートだ。
樹林帯に入り暫く歩くと車を止めた舟山十字路に到着。
お疲れ様でした。

練習したプルージックを実践した貴重な山行でした。
物覚えが悪いうえに忘れるのは早い。
出来の悪い後輩に辛抱強く指導して下さるリーダー、先輩方ありがとうございました。

Saさんの感想

今回はロープを張ってプルージックで自己確保しながらの岩稜登りの必要性を初めて実感出来た山行となった。

今年8月山行の阿弥陀岳中央稜に続く南陵ルートは好天に恵まれて終始爽やかな山行となった。
中央稜ルートでは道を間違えたのではと思うほど(実際 途中はルートを外れていたような)の急登があったが、南陵ルートは良く整備された歩きやすい登山道が続いた。

今回の目的の1つは岩稜でのクライミング技術の向上であった。
昨年の春から稜朋会に参加させていただき、ロープワーク講習、実地研修と回を重ねてきたが一向に身につかない。
復習が足りない!・・・・・実践が足りない!・・・・・・頭が足りない!・・・・
50歳を超え新しい知識の吸収、身体に覚え込ますのが如何に難しいかを実感させられる。

Kサブリーダー、Nサブリーダーはさすがに安定感のあるリードでプロテクションにロープを通しながら登攀していく。
言い訳ではないが、F代表をはじめ首脳部メンバーの登攀技術が高く、ついつい頼りきりになってしまう。
ここはI顧問の突っ込みどころになってしまうだろう!

フィックスされたロープにスリングをプルージックで巻きつけていよいよP3ガリーの登攀開始。
傾斜はそれほどでもないが、水の流れが薄氷を作っており一度足を滑らせばロープでビレイしていなければ一気に滑落であろう・・・
常に事故は一瞬!
P3ガリーを過ぎると後は岩稜ルートではあるが、今までの経験値の範囲内で山頂まで快適な登攀であった。

8月の中央稜登攀では眺望はほとんど無かったが、今回は蓼科、車山の奥に北アルプスの峰々(今年登った白馬・鹿島槍・穂高)、左手には乗鞍・御岳、更に南アルプスの仙丈・甲斐駒(今年の個人山行)・北岳(来年登るぞ!)、富士山(来年こそは・・・)も雄大な勇姿を魅せてくれている。
360度のパノラマ。
これがあるから山はやめられない!
思わずハイテンションになりT君、S君の3人でおちゃらけ写真を撮ってしまう。

山って やっぱりいいな~!



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