槍ヶ岳集中(北鎌尾根の思い出 3編)

 

2015年8月14日~16日

北鎌尾根の思い出 (1)
M.A 記

北鎌尾根からの槍登頂にあたり、計画、準備段階から大変お世話になりました。 北鎌尾根での様々な体験を通じ <よく私のような入会間もない、まだ実力のない人間を連れて行っていただいたな> と驚きとともに感謝いたします。

8/14は上高地から入り、大曲でキレット組と成功を誓い合い別れ、水俣乗越を目指す。この登りは急登で1時間半のコースタイムを20分上回るペースで歩き、乗越を過ぎると経験したことのないようなガレ場の急な下りで、草木を掴み、ガレとともに落ちるように下っていく。 今回の登山で私なりに気をつけていたことは、絶対に落石を落とさないということです。 そのために、常に足の置き方に注意を払う余裕を持つことが大事だった。 3泊4日で燕~槍~大キレット~北穂~前穂を一人でテント泊をしてから3日しか経っていないので、体の疲れは多少残っていたが、Fからリーダーから焼酎のお湯割りをいただいて、18時消灯のころになると深い眠りに陥り、すっかり疲れが取れて朝を迎えた。 北鎌沢右俣の沢は水量が減り、沢沿いに5時登行開始。天気は前日の小雨から一転、快晴に恵まれ、急な登りをよいペースで登る。 先頭のSさんと2番目の私でルートファインディングをするよう指示がリーダーから指示があった。

途中大天井ヒュッテの方がつけたという×印の分岐の後、沢が右と左に分かれるところで、左に行った。その後踏み跡は消え、急なガレ場、草つきを北鎌コルを目指して登行した。ここはもしかすると右が正解だったかもしれないが、「コルに向かっていればよいので、多少のルートの違いは間違いに入らない」と言われる。迷ったら尾根から西側(千丈沢側)に行くこと、また全体でそれほど難しいルートはないので、難しいと思ったらそのルートは違うこと(踏み跡のないガレたルンゼを登行したとき、難しいので違うと感じないといけなかった)などを念頭に置いた。 今回大変有難かったのは、ルートファインディングに参加させていただいた上、多少違っていてもリーダーは声をかけずそのまま登り、大間違いのルートファインディングだけ、訂正していただいたことです。私たちは分岐や道が不明瞭になると相談し、Sさんや私が先にルート確認に行ったり、少し違う立ち位置から別の踏み跡を見つけたり、バリエーションの面白さを少し味わうことができました。それも、経験のあるリーダーが見守っていていただいたからできたこと。経験の浅い人が北鎌のルートファインディングするのはとても難しいと感じました。 8時にようやく北鎌コルに着く。ここから眼前に聳える独標を目指し、稜線伝いあるいは西側(千丈沢側)にトラバース気味に登行する。 10時独標に着く。全体的にガレた急登は、浮石だらけで掴むもの、足を置く石も不確実なので、体重を分散させながらそっと登っていく。 北鎌平に着く。テントサイトがある。

槍の穂先へはチムニーが2つあった。2つ目のチムニーで、菅原さんは、「僕がリードだから、最初に登ります」と言って、フリーで登った。勇気ある立派なリードだなと思った。続いて私が登った。Yさんが登るときに、リーダーからロープを出すようにということで、ビレイポイントをSさんと作ろうとしたが、岩の向きが悪く作れず、不確実なビレイポイントになってしまった。(後で上のほうにリーダーからハーケンがあるよと言われた) Sさんが肩がらみビレイをし、 Yさんと続くIさん、リーダーが登った。肩がらみビレー、不確実なビレイポイント、これもアルパインなんだと思った。 チムニーの後は緩やかな岩登りで、槍の祠に出た。17時10分登頂。頂上は一般の登山者は誰もおらず、途中から私たちに付いて登った単独行の若者2人と私たちだけだった。ガスがかかり、ブロッケン現象で自分たちがガスに写っていたのと虹が見えたのが槍の神様からの贈り物だった。 記念写真を撮り、下山。混んでいないと予想される殺生ヒュッテに向かう。 殺生ヒュッテは北鎌を登ってきた登山客がほとんどで、混んでいなかった。リーダーが、「みんなよく歩いてくれた」と言ってビールを振舞ってくださり、怪我もなく無事元気に皆が下山できたことを喜び合った。

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北鎌尾根の思い出 (2)
T.Y 記

北鎌尾根は2回目。一度目は行け行けドンドンの頃で、相当以前の話。1年があっと言う間に過ぎるのでその位経っていると思う。 プロガイドにお願いし女性3人で、まるで子犬の様に後を追い早い時間に小屋に着いた記憶がある。しかし今回はテント泊。10年一昔で気力はあっても体力下り坂。前回の様に子犬の如くとはいかない。槍が見えても遥か遠く、全身を使いよじ登る所数回。ヤレヤレやっと槍の山頂だ、傍聴者誰も居ない。 しかし太陽がブロッケン現象で祝福。チャンスがあったらもう一度行きたかったコースの1つだった。山行にご一緒した皆様に感謝、感謝。体力を使う山行は1つでも若いうちにチャレンジしよ~う、実感。
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北鎌尾根の思い出 (3)
K.A 記

この夏の二つ目大きな挑戦である槍ヶ岳北鎌尾根。どんなに恐ろしい場所かと緊張して臨んだが、一生忘れる事はないであろう素晴らしい場所だった。剣岳源次郎尾根に続いて、自分の力で登ったのではなく登らせてもらったのだが、頂上にたどり付いた時は達成感と充実感で心が満たされていた。

スタート地の上高地はまさかの雨でカッパを着て出発。テンションが下がっていく。大曲で大キレットチームと別れ、水俣乗越を目指し急登を黙々と歩き高度をあげていく。水俣乗越からは下りと油断していたが、とんでもないザレザレの急下りで、一歩出した足を止めるのに苦労するほどだ。軽量化のために着替えを持ってこなかったのにパンツの裾がドロドロになり、更にテンションが下がっていく。ザレザレが終わっても沢沿いの歩きにくい大きな岩が続く。テントを張る北鎌沢出合についた時はホっとした。すでに10以上大小さまざまなテントが張ってあり皆さん思い思いに寛いでいるようだ。我々もすぐにテントを張り食事の準備。軽量化のためレトルトカレーと簡単なお惣菜に漬物と質素な食事だが、皆美味しいと食べてくれて食当として安堵した。お酒も入り、いつも通りのくつろいだ雰囲気に明日の挑戦を忘れてしまいそう。

この夜は2~3時間は眠れたが、そろそろ起床時間かなと時計を見るとまだ21時だったりして1時間おきに時計を見てしまい夜が長く感じた。やはり緊張のためか深く眠れないまま起床時間の3時を迎える。夕べは豊富に流れていた天井沢がただの水溜りになっていてボーフラも湧いていて水を汲むのに苦労した。 朝食後準備をして5時出発。まずは北鎌のコルまで600mの急登を両手両足使って大きな岩を乗り越えて行く。単調な登りと違い飽きないしまだ日が当たる前で涼しくて快適。今日の先頭は将来のリーダー候補SUさんとARさん。2人で相談してルートを探すようにとF代表の指示。 2時間近く登った右手の岩に薄っすら×印。「クライマーズホイホイ」と呼ばれる場所で、あの先が崖になっており迷い込んで命を落とすクライマーが多いため、大天井ヒュッテのご主人が×を付けたそうだ。

ペンキ印を見たのはここが最初で最後だった。 3時間近くかかりようやく北鎌のコルへ。稜線から素晴らしい絶景が広がっている。木登りのようなヤセ尾根を進み更に高度をあげていく。サルに威嚇されながら樹の中を進むとどっしりした独標が近づいてくる。圧倒されるような大きさでそびえ立っている。独標のトラバースルートが危険だとインターネットでよく見かける。しかし手がかり足がかりはあるので慎重に進めば大丈夫だった。何より前を歩くベテランのYさんが、前の二人と離れても気にすることなく「よっこいしょ」と言いながら歩きやすい場所を探しながら進んでいて、危ない場所は「ここにガバがあるよ」「足はここよ」と教えて下さる。私は前の人と離れてしまうと岩場ではどこを歩いていいか分からず慌ててしまうが、これが経験の差だなぁと思いながら安心して後ろを歩かせてもらった。

北鎌にルートはないと聞くが、まさにその通りだった。岩稜帯はどこでも通れるようにも見えるが間違えると乗り越えられない岩などに突き当たり道はなくなる。そういう場所で無理をすると事故につながる。私は先頭のSUさんの選んだ道を信じて付いて行くだけだが、最後尾を守るF代表としては会の運命がかかっており厳しい声が飛ぶ。「自分だけ通れる道じゃなくて全員が通れる道を探せ!」「こんな危ないところを歩かせるな!」 ルートが分かりにくくなるとARさんと相談したり「ちょっと待っていて下さい」と言い残し一人でルートを探しに行く。最初は「こっちだと思います」「大丈夫だと思います」の言葉が途中から「こっちです!」「大丈夫です!」自信ある返答に変わっていった。 神経をすり減らしルートを探すという大役を務めながら私たちにも気を配って声をかけてくれる。緊張の続くバリエーションルートで心強い事この上ない。 そして最後尾を守るF代表はSUさんに厳しく指導しながらも岩稜帯が楽しくて仕方ないご様子。慌てないでゆっくりでいいよと言いつつ、私のザックに頭突きすること十数回・・。岩を登るときは子供のようにニコニコしていて笑ってしまう。そんな雰囲気に「私だけ登れない岩があったらどうしよう」「皆さんの足を引っ張るのでは・・」不安な気持ちはいつしか消えて大パノラマ広がる北鎌尾根を楽しみながら歩いていた。 槍ヶ岳が見えてきた。隣に孫槍、子槍を連ねている。いろんな山から槍ヶ岳を見てきたが、全く違う山のようにも見えまた一つ山の奥深さを知った。

北鎌から見上げる槍ヶ岳は今までで一番大きく見えて威厳があり美しかった。 手や足をそっと置くだけで崩れていくザレ場の急登、足元は浮石も多く手で掴むと崩れてしまう脆い岩も多かった。大きな岩に乗ったら「ゴゴゴ」という不気味な音と共に崩れそうになるなど数々の危ない場所をなんとかクリアして、とうとう北鎌平へ。聳え立つ本峰左側に我々が登るスカイラインが見えている。ため息が出るほどかっこいい。 最後に槍の基部でチムニーに入り2回ロープを出してもらった。ARさんがロープなしで全身を使いスイスイ登っていく姿を見て、あんな風に誰にも負担をかけない自立した登山者になりたいと思った。この最後の登りで、全身を使うコツを少し掴んだような気がした。そしていよいよ頂上へ。北鎌から登ると居合わせた登山者から拍手が起こると聞く。誰がトップで行くか、話し合うまでもなく本日先頭で我々をリードしてくれたSUさんに決定!しかし到着が遅かったからか登山者はいなかった。でも自分たちに拍手、ハグして登頂の喜びを分かち合った。山頂はガスっていて何も見えなかったがブロッケン現象が起こり向うの自分がこちらの自分に手を振っている。神様はちゃんとご褒美を用意してくれた。

ルートを探してもらい、アドバスをもらい、ロープでビレーしてもらい、やはり自分の力ではなく皆の力で登らせてもらったとつくづく実感するが、心は感動でいっぱいだった。一生に一度の気持ちで挑戦したが、いつか自立した登山者になれたらまた挑戦したい素晴らしいルートだった。 この夏の二つの大きな挑戦が終わり心は抜け殻のよう。魂を山に置いてきてしまったのかな。最後にこれまでご指導くださった皆様のおかげで無事に登ることができ心から感謝申し上げます。



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