2016年5月8日
5月合宿 槍ヶ岳(飛騨沢)

平成28年4月29日(金)~5月1日(日)
参加者 12名

今年の春山合宿は白馬岳から槍ヶ岳に変更となり準備に3週間前から取り掛かった。
参加者が12名と多く、無雪期なら槍ヶ岳山荘から穂先(山頂)までは梯子や鎖場で多少時間がか
かっても心配はないが積雪期となると梯子は使えても鎖場が一部使えない。
登り下りが分かれている場所も下りルートの垂直に立っている鎖場が雪で使用できない為、登り
ルートが併用となる。その為に混雑に拍車がかかり順番待ちに時間が取られる。この季節はやむ
を得ないがロープを持たないグループが一番怖い。
万が一滑落したら玉突きで友連れになってしまう。昨年は北穂高でこの種の滑落で女性が亡くな
っている。今回も下山後にニュース等で穂高方面で遭難事故が多発し槍ヶ岳では事故は無かった
が滑落は止まってはいるが数件発生している。

槍ヶ岳の登頂者は槍沢・飛騨沢双方のアプローチの登山者の30%しか登頂していない。
山小屋関係者の話によると、冬は雪が少なかったが4月後半に雪が降り、穂先周辺の岩場に薄く
乗りそれが凍り、ピッケルのピックとアイゼンの前歯が浅すぎて刺さりずらく、使用方法に慣れ
てない登山者スリップが発生した。技術に不安な登山者は登りより下りで不安感じ、頂上直下の
20mの雪壁の前で戻る場合が多いとの事であった。

冬はそれなりの技術を持ち合わせた少ない登山者なので事故は稀であるが5月の季節は天気が
良ければ多少の雪山経験者でも穂先へ行けるが今回のように山頂で青空でも10分も経たない
内に天気が急変し強風とガスに覆われ視界が無くなる。それに加えて順番待ちで身体が冷えて
震えが止まらない。このようなときに奥穂高で梯子が落ち下にいた人が友連れになつたパター
ンである。

鎖や梯子が滑り易くなっている上に寒さで握力が弱くなっているのが重なるパターンである。
視点を変えて今回穂先手前で大きな浮石による滑落があり報告が出ている。我々もその浮石は
確認しているが単独者(我々のベースキャンプのテントの近くに張っていた)が順番待ちで大き
な浮石を掴んでの滑落。クライマーの常識では雪面にある大きな岩は浮いていないか確認して
から(3点確保)使用する。そのことが出来てなかった結果となる。
運よく他の登山者に5m滑落で止められたから報道にならないが、止めた人が引っ張られて友
連れになったら悲劇である。現場は足場の良い所では無い。セルフビレーを取っていない場合
は危険極まりない。

今回他にも12人連れの暴走ガイドグループに遭遇。
40年以上雪山に登っているが過去に見たことの無いグループである。その理由は割り込みは
この手のガイドグループや山岳集団はあるが、我々が山頂から下って来て、雪壁の悪場で登り
優先の原則で待ちに入り、ガイドグループが登ってきて閉口した。
コンテでビナ通しで客が10人登って来た。一人滑落したら玉突きで落ちてしまう。早く登れ
る技法ではあるがコンテは信頼おけるパートナーで多くても3人パーティである。
客を連れたパーティが使う手法では無い。下りにも使用しているから閉口してしまう。手法の
判らないお客が気の毒である。

山頂に着き視界が良いうちに、我々のロープ下降中に割り込み、強引にコンテで12人繋がっ
て行き、『結果オーライなら何でも有か』そんなパーティである。山中で大きな声で罵声を上
げる連中では無いので我々は冷静にロープをフィックスして1人づつ基本に忠実に時間は掛か
るがロープワークに徹する。多少天候が悪化しても経験の裏づけがあるので不安無く雪壁場所
を通過する。ゲレンデでは出来ない本格的雪のアルパインクライミングに感じるものがあった
と思う。穂先まで行けなく槍ヶ岳山荘で待機した参加者も上高地からの槍沢の緩やかな登りで
ない、急峻な飛騨沢を4時間掛けて登った事に山岳会員としてステップアップを喜んで次に望
んで欲しい。

4/28(木)
新宿スバルビル前に夜10時集合。
2台の車は連休前半、さほど混まずに一路岐阜新穂高温泉無料登山者用駐車場を目指す。
AM3:00頃駐車場着。駐車場は5割ほど埋まっている。AM6:30まで仮眠する。

4/29(金) 小雨後曇り時々晴れ
新穂高駐車場で3日間分の食料含めた共同装備を分配。毎回のようにテント泊の初日は荷物が
重い。身体が慣れる1時間はシンドイ。登山指導センターに計画書を提出。
岐阜では御嶽山の事故から登山計画書の提出が義務付けられており猶予期間ではあるが未提出
は万が一の場合は罰金5万円だそうだ。

AM7時30分指導センターを出発。雨も上がり回復方向で穂高牧場で休憩を取りながら白出沢
までダラダラとした林道が続く。白出沢を渡ってチビ谷付近より残雪。滝谷の水量は多くなく
幸い無事渡ることができた。途中何箇所かデブリ跡を渡る。少し晴れ間の出て来た空を振り返
ると北穂高や大キレットが美しい。滝谷より2時間ほどで槍平キャンプ指定地に到着。
キャンプ場は積雪1mくらい。既に10張りほどのテントが設営されていた。

4/30(土) 午前は晴れ、午後は曇りから急に横殴りの雪。稜線より下るとみぞれ。
(午後は天候が急変し冬山モードでした。)
AM3:00起床。AM5:00出発。幸い空は満天の星。飛騨沢沿いに飛騨乗越まで単調な登りが続く。
前後に10名程の登山者。振り返ると笠ヶ岳の稜線が素晴らしい。快晴だが稜線に近づくにつれ
て強風。出発から4時間ほどで飛騨乗越AM 09:20に上がった。大展望。
前後に大喰岳と槍の穂先。雪の大喰岳も迫力がある。

槍の穂先はあまり雪が付いておらずゴジラっぽい感じ。
飛騨乗越から直にAM9:30槍ヶ岳山荘小屋に到着槍ヶ岳山荘の前は残雪期の3000m級の稜線とは
思えないほど人が多い。槍沢側からも続々と登山者が登ってくる。
槍の穂先を観察すると山頂直の梯子の下の鎖場が真っ白で登りに苦戦している様子が伺える。
体調の悪い二人を山荘に残し、ハーネスとロープを装備してAM09:50に9名で山頂へ向かう。
槍の肩より山頂に向かうルートは雪で埋まって一本しかなく、山頂直下の鎖場は完全に雪で
埋まっている。そこで上り下りが交錯して渋滞。幸い風もなくアイゼンが効くので、そのまま
斜面に取り付いて3点確保しながら登る。

無事梯子に取り付いて上りきるとAM 11:00槍ヶ岳山頂360度何もなく見渡せる。
狭くて高度感があり、ちょっと怖い。先ほどまで快晴だったが少し雲が出てきた。
穂高方向にはヘリコプターが飛んでいるようだ。続々人が登ってくるため、そそくさと集合写真
を撮って急いでAM 11:10下山開始。

山頂直下の雪に埋まっている鎖場で、ガイド登山グループが12人をまとめてロープで繋いで登っ
てきたので通過するまで待機。その脇を単独の登山者が追い越して行ったりしてちょっと危ない。
ガイドグループが抜けて、下降の2人の先行パーティがロープセツトをセットしているので抜ける
まで待機。10分位で抜けたのでFがビレー点を探し先に立つ。梯子が丈夫なのでロープを持ってTo
に降りてくるように指示しセルフビレーを先に取り、次にKtに下りてくるように指示しセルフビレー
ス用のビレー点をセットする様に指示し、同時に残りメンバーが到着した場合のセルフビレー用の
ポイントを作るように説明。メインロープに後から到着したメンバーに繋がらないように指示する。

万が一1本のハーケンに大きなテンションがハーケンが耐えられず抜けることを想定。
初めてのアルパインの現場に自分達がバックアップ含めて何をしなければ成らないか説明。
それでもゲレンデと違い足場も不安定。残置のピンが何本もある訳ではない。時には岩もビレー用
に使わなければ成らない。周りから何を言われてもパーティ全体の安全が最優先。
抜きたいガイドパーティのようにいい加減なことを方法を取っていたら安全が担保できない。
ToにKtのビレーをするように説明しエイト環やATC等のビレーギヤーが無いのでカラビナを使用した 半マストをセツトして説明。
前夜にテントの中で勉強会をしたが手袋をしていると思うように半マストが出来ない。
これがアルパインで特に寒い雪山での臨場感である。

ロープ先端と末端を固定しセツトを終えたら梯子の上で待機していた凍えたメンバーを一人づつ
ビナ通しで通過させる。全員が抜けたらToを最後にしFがラスト2で先行しKo手前の岩で岩を
利用しToビレーしてつるべでKtの前の2ピッチ目に行かせる。
10mぐらいで危険地帯の雪壁を終え、そこにビレー点の残置に固定するように指示。
前後が固まった時点ビナ通しで1人づつピックとアイゼンの前歯でバックステップで雪壁を抜ける。
全員が抜けた後このあたりから風が猛烈になるが岩場なので部分的には強いが飛ばされるほどは無い。 視界は10m前後のガスの中。高度感が無いので不安は感じない。ロープを回収し小屋に向かう。 天気が悪化して心配していた2人の待つ小屋に到着PM 12:30槍ヶ岳山荘。待っていた全員で無事を祝う。

PM13:00に猛烈な風とホワイトアウトの中、下山開始。何度も来ているので不安は無いが稜線は
強風と横殴りの雪。離れ離れにならないよう固まって赤布が出る地点がまで注意し、途中からは
ガスの下になり視界が良くなる、雪から霙になったり止んだりを繰り返す。
谷に下りると風が弱くなり、みぞれの中、PM15:30槍平幕営地に着いた。
夜の間ずっと水分の多い雪が降り続いた。

5/1(日) みぞれ後曇り
朝起きると10cmほどの積雪。みぞれが降る中、AM05:20槍平ベースキャンプ地を雪で重くなった荷物 を担いで5時間弱でAM 10:30新穂高登山者用駐車場に戻り、途中新穂高温泉<ひがくの湯>に入り、食事 をし帰路に着く。連休の渋滞に巻き込まれながら夕方7時過ぎに事故も無く新宿に到着した。

<総括>
今回は9人が雪の槍ヶ岳に基本に忠実にアイゼンとピッケルのコンビーネーション・アルパインでの ロープワーク使い登頂し、多くの参加者が経験の無いアルパインの世界、急激な気象変化、冬山と春山 が同居した世界、重い雪の幕営等経験し思い出の山行になつた考えてます。
サブリーダーの育成も含めた行動。パーティ全体の安全を守る為に小屋での待機指示に参加者が協力して くれたことに感謝します。
記録 Y・F



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